プラスチックをリサイクル!3つの手法とは
概要
資源としての価値が再認識されているプラスチック。
しかし、廃棄されたプラスチックがどのようにリサイクルされるのかについて、詳細に把握している人はまだ少ないかもしれません。
本記事では、プラスチックの主要なリサイクル手法を少しだけ掘り下げ、皆さまに理解していただければと思います。
プラスチックの原料:石油
リサイクルについて考える前に、まずプラスチックの原料について考えてみましょう。
ご存知のように、プラスチックの原料は石油です。
かつて小泉元環境大臣が
「意外と知られていないケースもあるんですが、プラスチックの原料は石油なんです。」
と発言したことが話題になりました。
確かに、色や臭いがない石油が、私たちの生活を支えるプラスチック製品に変貌するというのは知らない人には驚きの事実かもしれませんね。
プラスチック廃棄物への視点
それでは一般廃棄物としてのプラスチックを考察してみましょう。
容器包装リサイクル法が施行されて以来、家庭でのプラスチックの分別は当たり前となりました。
我々が家庭で出すプラスチックごみは、実は分別後9割がリサイクルされています。※1
その58%は、サーマルリサイクルという名の「熱」を利用した再利用方法を使用しています。
サーマルリサイクルとは
サーマルリサイクルとは、具体的には分別されたプラスチックごみを焼却炉で燃やし、その熱エネルギーを回収、発電や温水プールなどに利用する方法です。
ここで皆さんは、「それって、普通の燃えるゴミの処理と何が違うの?」と思われるかもしれません。
しかし、プラスチックの燃焼は通常のゴミ焼却と大きく異なります。
サーマルリサイクルの秘密
ゴミ焼却炉では適切な温度管理が求められますが、通常のゴミ(生ごみなど)は水分を多く含むため、高温を維持する助けとなる重油などのエネルギー源が必要です。
ここで冒頭の発言を思い出してください。
そう、プラスチックの原料は石油なのです。
つまり、重油を使わずとも、プラスチックゴミをうまく利用すれば、焼却炉の温度調整が可能なのです。
マテリアルリサイクルとは
次に、リサイクルの方法として「マテリアルリサイクル」を紹介します。
日本のプラスチックごみの内訳は、58%が先述の「サーマルリサイクル」、そして23%が「マテリアルリサイクル」によるものです。マテリアルリサイクルは、廃プラを再びプラスチック製品へと再生する処理を指します。
しかし、マテリアルリサイクルの23%の中、16%が海外輸出されています。よって、実際に国内でリサイクルされるのは残りの7%程度の割合となります。
この7%という数字を見ると、「リサイクルにおいて日本はまだ遅れているのではないか?」と疑問に思われるかもしれません。しかし、その印象は実は早計です。
「PETボトルリサイクル」
マテリアルリサイクルの代表としてPETボトルリサイクルが挙げられます。
日本は、PETボトルのリサイクルにおいて世界の先進レベルを維持しています。
国内のPETボトルのリサイクル率は85%、回収率は93%と、その高さは一見の価値があります。
特に、これらの数値は欧州のリサイクル率42%、回収率62%を大きく上回り、世界でもトップクラスの水準と言えるでしょう。
回収したPETボトルは、フィルムやシート、繊維などにリサイクルして再利用します。さらにボトルをPETボトルに再生する「ボトル to ボトル」も現在拡大しています。
特にPETボトルのリサイクルに注目すると、日本は循環型社会実現に向けた秀逸な結果を上げていると評価できます。
ケミカルリサイクル:理想的なリサイクル法
そして、もう一つ私たちが知るべき重要なリサイクル法が「ケミカルリサイクル」です。
「化学的な処理を行い、廃棄物を原料に戻してからリサイクルする」方法で、何度でもリサイクルが可能な理想的なシステムと言えます。
上述のPETボトルをPETボトルに再生する「ボトル to ボトル」はまさにこのケミカルリサイクルの技術になります。
ケミカルリサイクルの課題
しかしながら、その理想性にも関わらず、現状では全体のリサイクルのわずか4%しか行われていません。
理由は様々ですが、要因の1つは選別にかかるコストです。
プラスチックといってもPET・PA・PP・PEなど様々な種類がございます。
原料に戻すためには、これらのものが「チャンポン」にならないようにしなければいけません。
又、不純物も除去する必要があり、塩素は特に障害となります。
例えばフィルムに印字されているインクの成分に塩素が含まれていたらアウトということです。
これらの課題を解決し、より良いリサイクルシステムを構築するための様々な研究が進められています。
まとめ
本記事は、プラスチックのリサイクルについて、サーマルリサイクル、マテリアルリサイクル、そしてケミカルリサイクルという主要なリサイクル手法を紹介しました。
これらの理解を深め、改善のためのアイデアや行動を生み出すことで、より持続可能な未来を実現していくことを願っています。
*1 欧米基準ではプラスチックゴミをそのままプラスチック製品へ生まれ変わらせるマテリアルリサイクル、
化学分解した後、プラスチック製品へ生まれ変わらせるケミカルリサイクルだけをリサイクルと呼び、
サーマルリサイクルは「熱回収」「エネルギー回収」として、リサイクルとは扱われていません。